



バルパライソ州の内陸、最高峰アコンカグア山に源を発する渓谷、アコンカグア・ヴァレー。温暖な内陸部は力強いカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーを、太平洋に近い「アコンカグア・コスタ」は冷涼な白やピノ・ノワールを生みます。名門ワイナリーであるErrázuriz(エラスリス)の本拠地として知られます。
産地としての歴史
1870年、ドン・マクシミアノ・エラスリスが、アコンカグア・ヴァレーの中心にあるパンケウエにワイナリーを創設し、フランス系の銘醸品種を持ち込みました。20世紀初頭にはチリ有数の規模を誇り、以来Errázuriz(エラスリス)が地域を牽引します。1995年には、米カリフォルニアのロバート・モンダヴィとの共同事業としてSeña(セーニャ)が誕生。2004年にベルリンで行われたブラインド・ティスティングで、ボルドーの名門シャトーを抑えて高い評価を得たことは、チリワインの実力を世界に示す金字塔となりました。近年は、太平洋に近い「アコンカグア・コスタ」の開拓にも力が注がれています。
気候の特徴
地中海性気候のもと、内陸部は日照に恵まれ、チリ全土でも屈指の温暖な栽培環境を誇ります。日中、熱せられた内陸の空気が上昇すると、太平洋からの冷涼な海風が谷へと流れ込み、気温を和らげます。一方、海に近い沿岸部(コスタ)は曇りがちで冷涼なため、内陸とは対照的な個性を持つワインが生まれます。
地形の特徴
アンデス山脈と太平洋の間を、東西に約100km延びる渓谷です。標高は、川沿いの段丘の約50mから、アンデス山麓の約1,000mまでと幅広く、東の山側ほど高くなります。大きく、海に近く冷涼な「コスタ」、中心の温暖な内陸部(エントレ・コルディジェラス/パンケウエ)、そしてアンデス寄りの「アンデス」に分かれ、ひとつの谷の中に多彩なテロワールが共存します。
地質の特徴
内陸は、沖積土や崖錐(がいすい)由来の土壌に、砂質や粘土、そして雪解け水が運んだ大量の石が混じります。地表の石は土中の水分の蒸発を防ぎ、やせた土壌はブドウに適度なストレスを与えて凝縮感を高めます。一方、太平洋から約12kmの沿岸部には、水はけがよく、上質な白や繊細な赤を生む頁岩(スレート)・変成岩の土壌が広がり、エラスリスのLas Pizarras(ラス・ピサラス)などの銘柄を生んでいます。
品種の特徴
内陸の主役はカベルネ・ソーヴィニヨンで、カルメネールやプティ・ヴェルド、マルベックも栽培されます。シラーが初めてチリ国内で栽培されたエリアであり、近年重要性が増しています。さらに内陸の暑い区画では、グルナッシュなどの地中海系品種も見られます。海に近いコスタでは、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、ピノ・ノワールが冷涼さを活かして育てられています。
ワインのスタイル
内陸は、凝縮した果実味と力強いタンニンの骨格を備えた赤が身上で、チリを代表するボルドー系のブレンドが世界的に知られます。沿岸のコスタは、ミネラル感のあるフレッシュな白と、繊細なピノ・ノワール、冷涼で香り高いシラーが特徴です。ひとつの渓谷で、力強さと繊細さという対照的なスタイルが楽しめるのが、アコンカグアの大きな魅力です。
