



ニュブレ州のイタタ・ヴァレー。16世紀からブドウが育てられてきた、チリワインの源流とも言える土地です。花崗岩の土壌に根を張る樹齢100年超のパイス・モスカテル・サンソーの古木が残り、自然派ワインの再評価とともに、いま世界の注目を集めています。
産地としての歴史
イタタ・ヴァレーは、スペイン人征服者(コンキスタドール)が16世紀に最初のブドウ畑を築いた、チリワイン発祥の地のひとつです。港町コンセプシオンの近くに畑を開き、ここから南部の栽培が広がりました。長らくPipeño(ピペーニョ)と呼ばれるパイスのワインの生産地として、フランス系ブドウ品種の台頭とともに軽んじられてきましたが、2000年代以降、灌漑をしない樹齢100年超の古木が、自然派ムーブメントとともに再評価されます。海外で経験を積んだ若い造り手と、馬で畑を耕す昔ながらの小農家が織りなす、いまチリで最も注目される伝統産地のひとつです。
気候の特徴
太平洋とフンボルト海流の影響を受ける、温和で冷涼な気候です。海風が夏の暑さを和らげ、年間約850〜1,100mmと比較的多い雨をもたらすため、チリでは数少ない、灌漑に頼らない天水栽培が成り立つ産地です。大きな昼夜の寒暖差が、ゆっくりとした成熟と豊かな香り、いきいきとした酸を生みます。
地形の特徴
イタタ・ヴァレーは、海岸山脈の古い丘陵地帯に広がり、緑の丘に古木が点在する牧歌的な景観が特徴です。花崗岩質の土壌は海岸線から約20km内陸まで及び、グアリリウェやポルテスエロといったエリアが古木の中心です。より内陸のイタタ川・ニュブレ川沿いには、礫や砂を含む沖積の河岸段丘が広がります。
地質の特徴
アンデスよりも古い海岸山脈が、何百万年もかけて風化してできた土壌です。中心となるのは、ピンクがかった花崗岩(一部は約2億年前の岩盤)と、その上にのる粘土質。やせて水はけがよく、古木のブドウに繊細さとミネラル感、塩気を帯びた精緻さを与えます。内陸には火山性の砂や沖積土も見られます。
品種の特徴
古木のパイスとモスカテル・デ・アレハンドリアが二大品種で、両者で栽培面積の約7割を占めます。近年とくに評価を高めているのが樹齢100年級の古木サンソーで、淡い色合いの軽やかで香り高い赤を生みます。ほかにセミヨンやカリニャンの古木、世界でも有数の古さを誇る接ぎ木なしの株が残り、新たにシャルドネやリースリング、ピノ・ノワールの植樹も進んでいます。
ワインのスタイル
イタタの真骨頂は、古木が生む繊細で土地の個性が際立つワインです。サンソーは、淡いガーネット色に、イチゴやバラの花びら、白胡椒、火打ち石のミネラルが香り、冷涼地のピノ・ノワールを思わせる軽やかさ。パイスは野いちごや赤い果実の素朴でフレッシュな味わいで、少し冷やしても楽しめます。モスカテルはマスカットやピーチの香りがし、辛口からティナハ(素焼き甕)熟成のオレンジワインまで幅広く造られます。いずれも低介入の自然派が主流で、土地の声がそのまま映し出されます。
主なワイナリー/生産者
※本拠地は他にありますが、この産地のブドウから一部のワインを生産しています。
