



チリの伝統的ワイン産地の南端を担うビオビオ・ヴァレー。古木のパイスやモスカテルが残り、チリのナチュラルワイン運動の中心地のひとつです。冷涼で雨が多く風の強い気候は、ピノ・ノワールやリースリングなどの冷涼地品種に理想的で、近年その評価が一気に高まっています。
産地としての歴史
ビオビオ・ヴァレーは、植民地時代からブドウが育てられてきた、チリ南部の伝統的な産地です。隣接するイタタと同じく、長らくパイスやモスカテルによるテーブルワインの地でしたが、1990年代以降、その冷涼な気候に着目した造り手が現れます。コノ・スルをはじめとする北部の大手ワイナリーが畑を買い求め、ブルゴーニュの名門ウィリアム・フェーヴルが土地を取得したことも話題になりました。古木のパイスを受け継ぐ小農家とともに、いまチリの冷涼地ワインとナチュラルワインの一翼を担っています。
気候の特徴
チリのワイン産地の中でも特に冷涼で、夏でも風が強い地域です。また雨が多いのが特徴で、年間降水量は約1,100mmにも達します。ブドウの生育期間が長くゆっくりと成熟するため、酸が美しく保たれ、アルコールは控えめ(多くが13.5%以下)に仕上がります。とりわけビオビオ川の周辺は冷え込みが強く、ピノ・ノワールやリースリングなど、長い熟成期間を必要とする品種に向いています。
地形の特徴
ビオビオ川の流域に広がる渓谷で、平地から緩やかな丘陵まで畑が点在します。太平洋のフンボルト海流の影響と、内陸へ吹き抜ける風が、産地全体に冷涼さをもたらします。海寄りのニュブレ〜ビオビオ一帯には、スレート(粘板岩)の土壌が見られる区画もあります。
地質の特徴
川がもたらした砂質・礫質の沖積土が中心で、肥沃で収量の上がる土地もあります。これに粘土や、火山由来の土壌(玄武岩など)が加わり、酸の生きた、引き締まったタンニンの構造的なワインを生みます。海寄りの一部区画には、上質なブドウを育むスレート(粘板岩)の土壌も見られます。
品種の特徴
20世紀までは古木のパイスとモスカテルが主役でしたが、その後ピノ・ノワールの栽培面積が拡大し、今では約4割を占める最多品種と言われています。冷涼さを活かしたシャルドネやソーヴィニヨン・ブランに加え、チリでは珍しいリースリングやゲヴュルツトラミネール、ヴィオニエといった芳香性品種が高い評価を得ています。一方で、古木のパイスやモスカテルも貴重な財産として受け継がれています。
ワインのスタイル
ピノ・ノワールは、ベリーの繊細な香りに、ほのかなスパイスやタバコのニュアンス、エレガントな酸の余韻を備えた冷涼地スタイルで、ロゼやスパークリングにも用いられます。リースリングは柑橘やライムの花の香りに張りのある酸、シャルドネは果実味とミネラルの調和が魅力です。古木のパイスは、穏やかなタンニンと鮮やかな酸の軽やかな赤で、近年の軽口赤ワインのトレンドと合致しています。
