



アタカマ砂漠の南部、太平洋に近いウアスコ渓谷。伝統的な甘口ワイン「パハレテ」やピスコの産地でしたが、近年は海岸性の冷涼さを活かした辛口ワインのフロンティアとして注目を集めています。
産地としての歴史
古くは、アンデス山麓の「アルト・デル・カルメン(アルト・ウアスコ)」で、標高1,100mを超える畑のアロマティックなマスカットから造る甘口ワイン「パハレテ」や、ピスコの産地として知られてきました。転機は2000年代初頭、ベンティスケロが「タラ」プロジェクトを立ち上げ、世界で最も乾燥した砂漠の南端に畑を拓いたことです。当初は植えた苗のごく一部しか生き残らない過酷な挑戦でしたが、生まれた辛口ワインは世界の評価を一変させ、チリ最北の銘醸地として知られるようになりました。以降、新興の小規模生産者が続いています
気候の特徴
世界有数の乾燥した砂漠の気候に、太平洋からの冷涼な影響が重なります。西へ15〜20kmの海から流れ込む海霧「カマンチャカ」が毎朝畑を覆い、貴重な湿りを与えたのち昼前に晴れ上がり、午後は冷たい海風が吹きます。強烈な日照と大きな昼夜の寒暖差のもと、ブドウは健全に熟しながらフレッシュな酸を保ちます。
地形の特徴
砂漠と海岸が接する、独特の立地です。大きく2つのエリアに分かれ、太平洋から約20kmの「ウアスコ・コスタ(海岸部)」では、海の冷涼な影響を受けてシャルドネやソーヴィニヨン・ブラン、シラーが育ちます。一方、内陸のアンデス山麓「アルト・デル・カルメン」は標高1,100mを超える高地で、伝統的なパハレテの郷です。畑はウアスコ川の流域に点在します。
地質の特徴
海岸部には石灰質(チョーク質)の土壌が広がり、ワインに明確なミネラル感をもたらします。海に近づくほど塩分を含む土壌が増え、これが独特の塩味(サリニティ)の余韻を生むと言われています。
品種の特徴
伝統品種のモスカテル(パハレテに使われる香り豊かなマスカット)に加え、海岸の冷涼さを活かしたシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、シラー、ピノ・ノワールが栽培されます。
ワインのスタイル
砂漠と海が出会う土地ならではの、ミネラル感と塩味(サリニティ)を帯びた、フレッシュで個性的なワインが生まれます。アルコールは控えめ(おおむね13%前後)で、強い日照に由来するストレートな果実味が特徴です。多くが少量生産で、ブティックワイナリーによる高品質なワインが、近年国内外で大きな注目を集めています。
