HOME » COLUMN » チリのオレンジワインとは?古木モスカテルとスキンコンタクトの伝統、おすすめ5本
チリのオレンジワイン

オレンジワインといえば、ジョージアやイタリア北東部を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかしチリにも、植民地時代から根を張る白ブドウの古木を、果皮ごと仕込んできた独自の系譜があります。

チリのオレンジワインは、イタタ・ヴァレーなどに残る樹齢数十年から100年超の古木のモスカテルやトロンテルを使い、果皮ごと発酵し(これを「スキンコンタクト」と呼ぶ)醸造した白ワインです。近年のナチュラルワインの潮流のなかで、土地の伝統を受け継ぐ新世代の醸造家によって、より幅広くに造られるようになっています。

本記事では、その歴史的背景、ティナハ(素焼きの甕)との関係、主な産地、そしてVinitoおすすめの5本を解説します。

この記事の要点

  • チリのオレンジワインの中心は、イタタ・ヴァレーなどの古木のモスカテルとトロンテル
  • トロンテルは、モスカテルとパイスが自然交配して生まれた品種
  • イタタでは、ティナハ(素焼きの甕)と果皮ごとの仕込みが、近代的な醸造設備の普及前から続く造り方とされる
  • 現代の造り手の多くは、ナチュラルワインの潮流のなかでこの伝統を取り戻し、介入を抑えて造っている
  • 近年はマウレ・ヴァレーやセミヨンなど、産地・品種ともに広がっている

チリのオレンジワインとは?

オレンジワインとは、一言でいうと「白ブドウで造った赤ワイン」。本来白ブドウは、収穫後すぐに圧搾して果汁だけを取り出し、果皮を除いて発酵させることで白ワインになります。一方でオレンジワインは、赤ワインと同様に、果皮ごと発酵・醸造して造ります(ちなみにロゼワインは「赤ブドウで造った白ワイン」に近く、果皮をすぐに取り除くことで着色を抑えます)。このような工程を経ることで、果皮から色素やタンニンが抽出され、琥珀色からオレンジ色の色調と、一般的な白ワインにはない渋みや厚みが生まれます。

「オレンジワイン」という呼び名は、2004年に英国の輸入業者が使い始めたとされ、実は比較的新しい言葉です。ただしチリでは新しいトレンドというより、昔ながらの白ワインの造り方に近い存在です。イタタの生産者のなかには、地元ではこうしたワインは単に「白ワイン」と考えられてきたと説明する人もいます。

チリ産オレンジワインの主な品種と産地

チリのオレンジワインの産地マップ

チリのオレンジワインは、主にモスカテル・デ・アレハンドリア(以下、モスカテル)、トロンテル、セミヨンを用いて造られています。

モスカテルはイタタ・ヴァレーで、赤ワイン用のパイスと並び植民地時代から栽培されてきました。イタタは、16世紀にスペイン人が最初にブドウ畑を築いたチリワイン発祥の地のひとつでもあり、今でもパイスとモスカテルで栽培面積の大半を占めます。またモスカテルはチリの伝統的な蒸留酒であるピスコにも用いられてきた歴史があり、チリ北部のウアスコ・ヴァレーやチョアパ・ヴァレーでも多く見られます。

トロンテルは、モスカテルとパイスが自然交配して生まれた品種です。名前の似たアルゼンチンの「トロンテス」と同じ両親を持つ近縁品種ですが、同一ではありません。イタタに加え、ビオビオ・ヴァレーでは樹齢約100年のトロンテルの畑からワインが造られているほか、マウレ・ヴァレーにも約80年の古木が残っています。モスカテルと同様に、ピスコにも使われてきました。

またセミヨンの古木を用いたワインも増えてきています。イタタには100年を超えるセミヨンの古木が残っており、それを使ったスキンコンタクトの白が近年注目を集めています。

これらの畑に共通するのは、灌漑をしない天水栽培、接ぎ木をしない自根のブッシュヴァイン(株仕立て)、そして花崗岩質の土壌です。馬で畑を耕す小規模農家も多く、収量の低い古木から凝縮した果実が採れます。

品種特徴主な産地
モスカテル植民地時代から栽培される白ブドウ。マスカットや白い花を思わせる華やかな香りイタタ
トロンテルモスカテルとパイスの自然交配種。モスカテルと香りが似ているが、より酸味があるマウレ、イタタ、ビオビオ
セミヨン古木が残り、近年スキンコンタクトにも用いられる。香りは比較的ニュートラルだが、熟成すると蜂蜜やナッツの香りがするマウレ、イタタ

ティナハとスキンコンタクト―チリの白ワインの原点

ティナハ(tinaja)とは、植民地時代にチリ中南部に持ち込まれ、ワインの発酵や貯蔵に使われてきた素焼きの大きな甕です。近代的な醸造設備の普及とともに姿を消しつつありましたが、2011年に中手ワイナリーのデ・マルティーノがイタタで放置されていた100年を超えるティナハを使い始めたことで、再び脚光を浴びました。

長らく貧困に苦しんだ農村部でもあり、近代的な白ワインの醸造技術が中々行き渡らなかったイタタでは、白ブドウも果皮ごと仕込むなど、昔ながらの方法が受け継がれてきたとされます。つまりスキンコンタクトを経た白ワインは、トレンドとして輸入された手法ではなく、この土地の農家が長く続けてきた造り方でもあるのです。

ナチュラルワインの潮流と、伝統の「再発見」

パイスの記事で紹介したように、チリ中南部の古木は、2000年代後半以降のナチュラルワインの潮流のなかで再評価されてきました。オレンジワインも、その延長線上にあります。

イタタの沿岸部にあるコブケクラ拠点に活動する醸造家のレオ・エラッソは、コンセプシオンの大学で教鞭をとっていた2010年にワイン造りを始め、地質に関する深い知見を生かしたワイン造りを続けています。ロベルト・エンリケスはフランスのロワールで学んだのち、故郷に戻って古木の畑と向き合っています。イタタの内陸部のポルテスエロでは、グスタボ・リフォが家族の畑を引き継ぎ、有機栽培への転換や、古い甕を使った長期のスキンコンタクトに取り組んでいます。

造り手たちが口をそろえるのは、「失われかけた伝統を取り戻す」という考え方です。スペイン語で「rescatar(救い出す、取り戻す)」にあたるこの姿勢が、古木の畑を守り、天然酵母で、添加物を抑え、ティナハやコンクリート、古樽といった素材を生かすワイン造りにつながっています。

Vinitoおすすめ:チリのオレンジワイン5本

古木と伝統に根ざした、Vinitoが注目するチリのオレンジワイン5本をご紹介します。

Gustavo RiffoによるチリのオレンジワインA Pelo

A Pelo ― Gustavo Riffo(イタタ・ヴァレー)

ポルテスエロにある、グスタボ・リフォの家族の畑から生まれる一本です。古木のモスカテルを100%使用。天水栽培で、自根の株仕立ての畑から手作業で収穫され、ティナハのなかで数か月間、果皮とともに発酵・保管されます。モスカテルらしい華やかな香りと、果皮由来の厚みが共存します。

こんな方におすすめ: ティナハで仕込む、伝統に近いスタイルを体験したい方。オレンジワインの香りの華やかさを楽しみたい方。

Leo ErazoによるチリのオレンジワインLa Ruptura

La Ruptura ― Leo Erazo(イタタ・ヴァレー)

コブケクラを拠点とするレオ・エラッソが手掛けるオレンジワイン。グアリリウェの古木モスカテルから造られます。スキンコンタクトによる黄金色の色調に、アプリコットやピーチ、そしてナチュラルワイン特有の酵母を感じさせる濃厚なスタイルです。

こんな方におすすめ:ナチュラルワイン好きの方。濃厚でや渋みのあるオレンジワインに挑戦したい方

Maturana WinesによるチリのオレンジワインNaranjo

Naranjo ― Maturana Wines(マウレ・ヴァレー)

コルチャグアのワイナリー Casa Silvaで15年間チーフ・ワインメーカーを務めたホセ・イグナシオ・マチュラナが、2014年に弟とともに立ち上げたワイナリー。このNaranjo(ナランホ)は、マウレのロンコミジャにある樹齢約80年のトロンテルから造られ、約8か月間、果皮とともに醸されます。紅茶やオレンジピールを思わせる香りで、しっかりとした構造と長い余韻が特徴です。

こんな方におすすめ: 骨格のあるしっかりしたオレンジワインを求める方。チーズやスパイス料理と合わせたい方

Roberto HenriquezによるチリのオレンジワインRivera del Notro Naranjo

Rivera del Notro Naranjo ― Roberto Henríquez(イタタ・ヴァレー)

コンセプシオン出身のロベルト・エンリケスが、イタタ沿岸の花崗岩土壌の古木(樹齢60〜120年)から造るオレンジワインのブレンド。モスカテル、トロンテル、コリント(シャスラ)、セミヨンの4品種を別々に仕込んだのちにブレンドしています。紅茶やアプリコットを感じつつ、しなやかな酸とテクスチャーが調和します。

こんな方におすすめ: 複数品種が織りなす複雑な味わいを楽しみたい方。酸味のあるすっきりとしたワインが好きな方

Carter MollenhauerによるチリのオレンジワインLa Palma

La Palma ― Carter Mollenhauer(イタタ・ヴァレー)

エドガー・カーターとカリーネ・モレンハウアーの夫妻が2014年に立ち上げたワイナリー。マウレとイタタの内陸乾燥地の古木を有機栽培・天然酵母・最小限の介入で醸造しています。「La Palma」はイタタのセミヨンから造られるスキンコンタクトを経たワインで、白い花やハーブ、蜂蜜の香りとまろやかな口当たりが特徴です。

こんな方におすすめ: モスカテル以外のオレンジワインを試したい方。セミヨンの古木の個性に興味がある方。